解説・解釈

探偵業法の解説

正式名称「探偵業の業務の適正化に関する法律」(平成18年法律第60号、通称:探偵業法)について、届出の考え方を中心に、定義・欠格事由・義務・罰則をまとめました。実際の届出書作成は各様式のページで行えます。

1. 法律の目的とできた背景

探偵や興信所などの調査業については、かつて業務を直接規制する法律がありませんでした。調査を依頼した人との間の契約トラブルや、違法な手段による調査、調査で知った秘密を利用した恐喝といった問題が起きたことを背景に、平成19年6月1日に探偵業法が施行されました。

この法律は、探偵業を振興するためのものではなく、探偵業に必要な規制を行うことで業務運営の適正化を図り、依頼者や調査対象者となった個人の権利利益を保護することを目的としています(法第1条)。

2. 「探偵業」「探偵業務」の定義と適用除外

探偵業務とは、他人からの依頼を受けて、特定の人の所在または行動に関する情報を集めるために、面接での聞き込み、尾行、張り込みなどの方法で実地に調査を行い、その結果を依頼者に報告する業務をいいます(法第2条第1項)。

探偵業とは、この探偵業務を行う営業のことです。ただし、もっぱら放送・新聞・通信社などの報道機関からの依頼を受けて、報道目的で行う調査は除かれます(法第2条第2項)。

次のような活動は、探偵業法の対象にはなりません。

  • 作家・ジャーナリスト・インターネットメディア等が自身の報道・著作のために行う取材活動
  • 学者・研究者が学術調査の一環として行う調査
  • 弁護士・公認会計士・税理士・弁理士が自ら受任した事務のために行う調査
  • 世論調査やアンケート調査
  • 電話やインターネットでの情報収集のみによる調査
  • 広く情報を集めて一覧表やデータベースを作成し、提供するだけの業務

「営業所」とは、本店・支店・事業所などの名称にかかわらず、営業上の主な活動が行われ、従業者の配置や業務運営が実質的に行われている場所を指します。個人で営む場合は、依頼を受け付ける事務所や自宅が営業所にあたります。電話の取次ぎのみを行う場所や私書箱だけの場所は営業所にはあたりません。

3. 探偵業を営むことができない場合(欠格事由)

次のいずれかに該当する人・法人は、探偵業の届出をしても営業することができません(法第3条)。届出後にこれらに該当することとなった場合は、営業を廃止しなければなりません。

番号内容
1破産手続開始の決定を受けて、まだ復権していない人
2拘禁刑以上の刑、または探偵業法違反による罰金刑を受け、執行が終わってから(執行を受けなくなってから)5年を経過していない人
3直近5年間に、営業停止・営業廃止命令などの処分に違反したことがある人
4暴力団員、または暴力団員でなくなった日から5年を経過していない人
5心身の故障により探偵業務を適正に行うことができないと内閣府令で定める人
6成年者と同一の能力を持たない未成年者で、その法定代理人が1〜5または7に該当する人
7法人で、役員のうちに1〜5に該当する人がいる場合

4. 届出の種類と提出期限(開始・変更・廃止)

探偵業を営もうとする人は、営業を開始しようとする日の前日までに、営業所ごとに、その所在地を管轄する警察署を経由して、都道府県公安委員会に開始届出書(様式第1号)を提出しなければなりません(法第4条第1項)。届出をせずに営業すると、無届営業として罰則の対象になります。

届出をした事項に変更が生じたとき、または探偵業を廃止したときは、公安委員会にその旨の届出書を提出する義務があります(法第4条第2項)。

届出の種類様式提出期限の目安
開始の届出様式第1号営業を開始する日の前日まで
変更の届出様式第3号変更の日から10日以内(登記事項証明書の添付が必要な変更は20日以内)
廃止の届出様式第2号廃止の日から10日以内

主な届出事項は、(1) 商号・名称又は氏名及び住所、(2) 営業所の名称及び所在地並びに主たる営業所である場合はその旨、(3) 商号等または営業所名称とは別に広告・宣伝で使う名称があるときはその名称、(4) 法人の場合は役員の氏名及び住所、の4点です。営業所の所在地が異なる都道府県に変わる場合は、変更前の都道府県には廃止届出、変更後の都道府県には新たに開始届出が必要になります。

期間の数え方は、変更・廃止の日そのものは含めず、その翌日から数えて10日以内(民法第140条の考え方)です。

5. 標識の掲示義務

探偵業者は、公安委員会に届出をしたことを示す標識(様式第4号)を、営業所の見やすい場所に掲示しなければなりません(法第12条第2項)。令和6年4月1日の法改正により、それまでの「探偵業届出証明書」は廃止され、標識の掲示に一本化されました。標識に記載する受理番号は、開始届出のときに交付された番号を使います。

常時使用する従業者が5人以下の場合、または自社が管理するウェブサイトを持たない場合を除き、標識と同じ内容をウェブサイトにも掲載する必要があります。標識は日本産業規格A4サイズの白色の紙に、黒色の文字・枠線で作成します(感熱紙は不可)。探偵業者以外の人が標識やこれに似た表示を掲げることは禁止されています(法第12条第3項)。

6. 契約締結前後の書面交付義務

探偵業者は、依頼者と契約を結ぶ前に、調査結果を犯罪や違法な差別的取扱いなどに使わない旨の書面を依頼者から受け取らなければなりません(法第7条)。

また、契約を結ぼうとするときは、あらかじめ重要事項を記載した書面(契約前書面)を交付して説明する義務があり(法第8条第1項)、契約を結んだときは遅滞なく、契約内容を明らかにする書面(契約後書面)を交付する義務があります(法第8条第2項)。これらの書面は電子データではなく、紙で交付する必要があります。

契約前書面には、探偵業者の名称や届出をした公安委員会、遵守すべき法令、秘密保持の方法、提供できる調査の内容、委託の有無、費用の概算、契約解除の条件、資料の処分方法などを記載します。契約後書面には、これらに加えて契約担当者名や契約年月日、調査の具体的な内容・期間・方法、報告の方法・期限などを記載します。

7. 秘密保持・名簿整備・教育

探偵業者やその業務に従事する人は、正当な理由なく、業務上知り得た秘密を漏らしてはいけません(法第10条第1項)。この義務は退職後も続きます。また、業務で作成・取得した資料の不正利用を防ぐための措置(取扱者の限定、持出し手続、保管・廃棄方法の取り決めなど)を取る必要があります(法第10条第2項)。

従業者に対しては、探偵業務を適正に行わせるための教育を行う義務があり(法第11条)、営業所ごとに従業者名簿を備え付け、氏名・住所・性別・生年月日・採用日などを記載する義務があります(法第12条第1項)。退職者の名簿は退職後3年間保管する必要があります。

探偵業者は、調査結果が犯罪行為や違法行為に使われることを知ったときは、その探偵業務を行ってはいけません(法第9条第1項)。また、探偵業務の全部または一部を、届出をしていない者に委託することは禁止されています(法第9条第2項)。

8. 行政処分と罰則

公安委員会は、探偵業者が法律や関連法令に違反し、業務の適正な運営が害されるおそれがあると認めるときは、必要な措置をとるよう「指示」できます。運営が著しく害されるおそれがあるとき、または指示に違反したときは、6か月以内の期間を定めて業務の全部または一部の「停止」を命じることができます。欠格事由に該当する人が営業している場合は、「営業の廃止」を命じることができます(法第14条・第15条)。

違反行為の例罰則の目安
営業停止命令・営業廃止命令への違反1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金
無届営業、名義貸し、指示違反6か月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金
開始・変更・廃止の届出義務違反、届出書類の虚偽記載、契約前後書面の不交付・虚偽記載、従業者名簿の不備、報告拒否、立入検査拒否など30万円以下の罰金
探偵業者以外の者による標識の掲示・インターネット表示20万円以下の罰金

従業者が業務に関して罰則の対象となる違反をした場合、その従業者本人だけでなく、法人や個人事業主にも罰金刑が科されることがあります(両罰規定・法第21条)。

※令和7年6月1日施行の刑法改正により「懲役」「禁錮」は「拘禁刑」に一本化され、探偵業法の条文も改正されています。同日前の行為には改正前の刑が適用されます。

このページの位置づけ

このページは探偵業法の考え方を理解しやすくするための一般的な解説であり、法令の全文でも、個別の事案についての法的助言でもありません。実際の届出や契約書面の作成にあたっては、条文および提出先の都道府県警察の案内を必ずご確認ください。詳しくは利用規約をご覧ください。

9. 参考リンク